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2017年6月2日金曜日

中国人技術者を日本に招く価値

 最初に断りを入れると、この記事で書く内容は中村紀洋氏並(?)に特殊な経歴を歩んだ私だからこそ書ける内容だと思え、なかなかよそではお目にかかれないのではないかとも思います。

 話は一か月前に溯りますが、日本に一時帰国した際にビックカメラで携帯電話用フィルムを探していたところ、ほしいサイズの在庫があるかを確認しようと店員に声をかけてしばらく話をした後、「もしかして中国人?」と、店員の名札を見て私から聞きました。
 聞いてみるとやはり中国人だったのでそのあとは中国語に切り替えて少し雑談をしましたが、なんでも日本にはもう7年間住んでるとのことで、日本については「暮らしやすい」という風に話していました。

 その後店を出た後で少し考えたこととしては、現在中国へ進出する日系企業の業種はその大半がサービス業で、特に小売りや飲食が目立って多いのですが、日本語の使える中国人は探せば簡単に見つかるものの、更にこうした小売りや飲食といった業種を経験していてノウハウが分かっているという条件を付けるとなるとなかなか見つからなくなるという話を、以前に人材会社総経理から聞いたことがありました。恐らく、いまだと少しは改善されてはいると思うものの、サービス系企業の進出はずっと右肩上がりであることを考えればやはり今でも不足し続けているかと思います。
 それであればむしろ、上記のビックカメラの店員のように日本の大学を出てそのまま日本で就職した従業員を中国に派遣したらどうなのかなという案が浮かんできました。こうした中国人従業員ならノウハウもわかっており、且つコミュニケーションにも問題がなく、そして何よりも日本で研修を受け業務を学んでいるという点が大きなメリットです。唯一の難点としては、中国に帰りたがらない中国人が案外多いということですが。

 まぁ私がこう思うあたり、恐らく実際に日系小売企業とかでは既に上記のプランを実行しているでしょう。むしろ日本国内でそうした中国人従業員をあまり雇っていない企業が中国に進出するのであれば、上記のような大手小売りや飲食系企業の店員をスカウトするのが手かなと言えます。

 ここまで考えた後でふと、「逆はどうかな?」と思いました。つまり日本で働く中国人を中国に送るのではなく、中国で働く中国人を日本に送る、という案です。どうでもいいですが「案です」と入力したら「アンデス」と表示され山脈を思い浮かべました。
 ここでいう「中国で働く中国人」とはそのまんまの意味ではなく、日系企業ではたいている中国人、特にメーカー系企業を指します。先ほど私はサービス業を経験している日本語の話せる中国人を現地で見つけるのは難しいと書きましたが、これがサービス業ではなく製造業であれば話は違い、既に日系メーカーが長年中国で事業を行っていることもあってか工場長をやれるようなクラスであっても日本語を使える中国人はすぐに見つけられます。いわんや技術者もです。

 技術大国日本がどうしてわざわざ中国から技術者を呼ばなきゃいけないのかと思われるかもしれませんが、はっきり言いますが技術者が不足しているのは日本の方です。特に30代から40代の中堅クラスはどの中小企業でもぽっかり穴が空いたように不足しており、企業コンサルしてる友人も「20年後には日本の製造業は成り立たなくなる」とガチで予言されました。

 実際、私自身もそれを目の当たりにしています。冒頭で書いたように私は歪な経歴をしていて貿易事務やってからライターとなり、そのあとでまたメーカーで品質管理やらされるという明日をも知れない経験をしてきました。最後のメーカーのところですが、ここなんかまさに中小メーカー企業というようなところで、上があまりにも計画なかったから無意味に工場で半年も勤務させられましたが、工場内の年齢構成に正直ぞっとしました。
 すでに述べている通りに30代、40代の技術者、工員がほとんどいないにもかかわらず、50代、60代は呆れるほど多く、しかもその一部は確実に老害となっていました。その老害は面倒くさい仕事は数少ない30代と40代社員に投げるせいでこの層は非常に忙しくしてるのに高い給与をもらい、さらにはしょっちゅうトラブル起こすなどで、企業コンサルしてる友人の言は正しかったと確認させられました。

 技術者というといろんなものを開発したり発明したりというのを思い浮かべがちですが、実際にはプレス機の整備や運転、熱処理の管理、金型のメンテナンスなど地味な仕事が多いです。しかしそうした地味な仕事を担うには経験と技術が必要なのは間違いなく、パッと来たばかりの人間に任せられるようなものではありません。にも関わらず本来中核となる30代、40代の年齢層は大手は知りませんが中小ではほぼ絶滅危惧種となっており、技術の継承以前に設備を稼働させたり維持したりする上でも危険な領域にあると断言できます。

 一方、中国では皮肉なことですがまだまだ景気も悪くないこともあって、日系企業が工場内で結構忙しく育成しており、割とこの年代の技術者は豊富にて、しかも日系企業内であれば日本語の使える技術者も珍しくありません。これから日本で若手技術者を育成するくらいならばいっそ、日本での勤務を希望する中国人技術者をこういうところから日本に連れてきた方がいいのではと、真面目に覚えました。

 繰り返し言いますが技術というのは天才的なひらめきではなく経験と知識によって生産を維持する能力の方が重要であり、これは質もともかくとして量も強く求められる要素です。日本は質も最近怪しいですが量の方面は致命的な水準にまで落ち込んでおり、何も中国人技術者に学べとまでは言いませんが、彼らの力を借りる価値がある経済状況にあると思う、というよりもうそうなっています。幸いというか日本国内での勤務に興味を持つ中国人は少なくなく、募集をかけたら家族ぐるみで来ようと思う中国人はいると私には思えるだけに、こうした動きが今度高まっていけばと本気で考えています。

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