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2016年8月28日日曜日

中国・美的集団の独KUKA買収について

 最近何気なく中国のネットニュースを見ていたところ、以下のニュース記事を初めて見てびっくりしました。

中国企業の独ロボット大手買収、難関は突破できたのか?―中国紙(人民網日本語版)

 記事概要はというと、先日に東芝の白物家電部門を買収した中国家電大手の美的集団(Midea)が産業用ロボット世界大手の独KUKA(クカ)の買収に動いているそうです。買収額は45億ユーロ(約5200億円)でKUKAの株式76%を握り、既に合意は成されていることが美的の広告で示されており後は関係各国の独禁法に係る買収承認を待つだけの状態だそうです。上の記事はKUKA本国のドイツで承認が得られる見込みになったいうニュースで、これを見る限りだと話は軌道に乗っているように見えます。

 私は最初この記事を見た時、てっきり中国のメディアが勝手な憶測記事を出したのではないかと正直疑いましたが、試しにネット検索をかけてみたところ今年5月の時点から報じられ始めており、中国以外にも香港や米国系メディアも事実と報じています。そう、日系メディアを除いた外国メディアで。

 私が本当かどうか疑った大きな理由としては、「KUKAほどの大きな企業が中国企業に買収されるのであれば、絶対大きな話題になってるはずで自分が知らないはずはない」という意識からでした。私自身は産業用ロボット業界にはそんなに首突っこんだことはありませんが、KUKAといえば日本の川崎重工や安川機械と世界で凌ぎを削るロボット業界の名門中の名門企業であり、仮にこの買収が実現すればその産業シェアにも大きな影響を与えることは確実です。そんな会社の買収案件についてどこも報じないなんて有り得ない、なんて思ったのは私だけだったのかもしれません。

 ざっとネットで調べたところ、買収報道の第一報がなされた今年5月に日刊工業新聞や産業用ロボット業界紙などが少し触れていますが、それ以外のメディアは日経を含めて全くヒットせず、どうやら日本ではほとんど報じられていなかったようです。試しに「冷凍たこ焼きなら加ト吉」と断言する私の友人にも確認した所、KUKAという企業についてはその影響力を含めもちろん知っていながらも、この買収ニュースについては全く知らなかったとのことです。
 やや過剰に反応しているだけかもしれませんがこれほどの大きなニュース、はっきり言えば東芝の白物家電部門の買収なんて比較にならないほど大きなディールを日系メディアが揃って無視しているという現状を私は信じられませんでしたし、何故報じないのか不思議に思えてなりません。はっきり言えば、イカれてるとすら思いました。

 中国の製造業は現在、鉄鋼を始めとしてどこも下向きながらも、産業用ロボット業界は中国の人件費が高まるにつれて需要は伸びており、実際にロボットメーカーでは新規設備投資の話をよく見ます。だからこそこの買収劇も起こったのでしょうが、これまで中国には外資系のロボットメーカーしかなかったところに中国系列メーカーが誕生することになり、恐らく顧客としては最大の自動車業界では美的+KUKAからの導入が増える可能性があります。ただでさえ中国とドイツの合弁自動車メーカーが多いわけですし、そうなれば中国に進出している川崎重工と安川機械も影響を受けるでしょう。

 美的の東芝白物家電部門の買収額は約500億円でしたが、今回のKUKA買収はその約十倍なだけに、ニュースのデカさもそれくらい大きいし価値があると私は考えますが、必ずしもそれは多数派の意見ではないようです。誇張ではなく、いくら海外に目が向いていないとはいえ真面目に日系メディアは大丈夫なのかとこの一件では怒りを通り越して不安を覚えるほどで、もっと中国の新聞を真面目に読まなければと思い知らされました。

 なお余談ですが前住んでた昆山には川崎のロボット工場があり、関連するハーネスメーカーなども多く進出していました。自分が付き合ってた人間は化学品関連メーカーが多かったというか今でも多いのですが、もし知り合いにいたらこの方面で取材出来ればよかったです。

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