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2013年7月3日水曜日

中国での戸籍異動制限の緩和方針について

中国、小規模都市・町の定住制限を全面撤廃(人民網日本語版)

 ちょっと時間が経ってしまっておりますが、非常に重要な中国ニュースなので私も取り上げておくことにします。

 まず前提の知識として、中国の戸籍制度について簡単に説明します。今現在の世界で戸籍制度がある国と言ったら私が知る限り日本と中国だけで(韓国は数年前に廃止)、日本の場合は部落出身者を区別するという要因が強いため残されていますが、中国では農民の都市への大量流入を防ぐためにこの制度が残されております。

 中国の戸籍は大きく分けて都市戸籍、農村戸籍の二種類に分かれており、都市戸籍の保有者は比較的どこでも簡単に戸籍の異動を行うことができますが、逆に農村戸籍の人間は別の農村ならともかく、都市部への異動は厳しく制限されています。もちろん都市戸籍を持たなくても都市部に住むこと自体は可能ですが、戸籍の異なる都市では様々な行政サービスが受けられなくなり、たとえば住宅購入が制限されたり、子供の公立学校への就学が認められなかったりして不自由な点がいっぱいです。
 一方、都市側の行政としてもいろいろ厄介な点が多いです。というのも個人への税金はその人の戸籍がある行政に納付されるため、税金を払っていない非戸籍者に対しても最低限の行政サービスを実行しなくてはなりません。それが100人は200人相手ならともかく、数万人ともなると行政コストは馬鹿にならなくなります。

 こうした戸籍の違いからくる行政問題の主役というのは言うまでもなく農村から都市部やってきた出稼ぎ農民、いわゆる農民工なのですが、多かったら多かったらで問題だし、かといって彼らが都市部に来なければ3K労働の労働力が足りなくなるというジレンマがあり、中国における社会問題の最たる課題と言っても差し支えないかと思います。無謀にも、これを卒論のテーマにしようとして私も失敗したことがありますが。

 ここで話を最初にリンクを結んだニュースにようやく戻ります。このニュースでは中国での内閣に当たる国家発展・改革委員会(発改委)がこのほど、都市に限って農村からの戸籍移動制限を緩和する方針を示したそうです。具体的な時期はまだ明らかにしていないながらも小規模の都市においては移動制限を完全撤廃、中規模と大規模の都市に関しても徐々に制限を緩和していくとのことで、これまでの中国の歴史から言っても画期的な発表のように私には思えます。

 中国政府としてはやはり、付加価値の低い農業からより付加価値の高い工業やサービス業への産業転換を図りたいと考えているようで、とくにサービス業の発展には都市部での消費額向上が欠かせないため今回の戸籍移動制限の緩和に踏み切る方針を出したのでしょう。もちろん北京や上海といった超大都市への戸籍異動制限は今後も続くでしょうが、地方の中小都市部への異動制限を緩和することによって大都市への一極集中を緩和させる効果も期待できるうえ、地方都市の発展につながるかと思えます。
 逆にデメリットとしては言うまでもなく食料生産で、勝手に推測するなら農業の大規模集約化も同時に進めていくかもしれません。むしろそうしないと国が持たないのだけれど。

 あともう一つ付け加えると、このブログでも何度も書いていますが去年あたりから中国政府はよく「城市化(都市化)」というスローガンを掲げています。このスローガンの言わんとするところは文字通り、地方の都市発展を推進するもので、これまで外国からの投資や輸出に頼った経済ではなく国内消費を活発化させることによって経済全体を盛り上げていこうという内容です。
 このスローガンと今回出された戸籍移動制限緩和は完全に軸が一致しており、日本みたいに言うだけ言って実行に移されないのとは異なり、きっと近いうちに具体的な政策が出されるかと思います。もっともリンクを結んだ記事にも書いてありますが、各都市がどれだけの人口流入に耐えられるか、人口の急増に行政サービスが間に合うのかという課題も残されており、今後こうした問題への対策案を注視していく必要があるでしょう。

2 件のコメント:

上海忍者 さんのコメント...

上海の戸籍制度の緩和に強く反対致します。緩和されれば、数多くの地方人は上海に移住し、上海はいつかきっと爆発しますよ。上海の資源も地方人に奪われると思われます。
因みに、北京の戸籍制度を開放させることに賛成しますわ。

花園祐 さんのコメント...

 厄介なのを全部北京に押し付けちゃダメだって(・A ・)イクナイ!!