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2013年6月15日土曜日

留学生を増やすべきなのか

 本日は一家言ある内容なので、二日連続で休んだ後もあるため気合入れて記事を書いていこうかと思います以前からも感じておりますが楽を狙って簡単なテーマの記事を書くよりも少々重厚で解説のし甲斐のあるネタの方がこっちも書いてて楽しいし読んでる側も面白いと感じてもらえるのではと思います

首相「留学生増加に努力」 有識者会議の提言受け(日経新聞)

 安倍首相政府はこのところ第三の矢こと経済成長戦略方針を矢継ぎ早に発表しておりますがその中の一つに上記リンク先に挙げた海外渡航する日本人留学生増やすという案がありますこの案について安倍首相は以前に海外留学を希望する学生が全員留学できるように、奨学金などの制度を整備していく」とも発言しており、例のグローバルな人材を増やしていくことが大きな目標だと語っております。
 結論から述べると、恐らくというかこんな意見を言うのは間違いなく自分だけでしょうが、私はこの留学生を増やしていく方針に反対で、こんなものに税金を使うべきじゃないという立場を取ります。

 まず誤解してもらいたくないので先に言っておくと、海外に留学するのはその人自身の長い人生で見て非常に価値ある行為だと考えており、行けるものならもちろん行くべきだと考えております。私自身も中国の北京市に一年間行ってきてその辺はこのブログの「北京留学記」のラベル記事にまとめてありますが、日本国内では得られない視野や経験が得られたことはもとより、現地人やその他の国の学生と交流できたことは今でも大きな財産となっております。
 にも関わらず何故留学生を増やすべきではないという立場を取るのかというとこれは単純明快で、日本国内にそうやって海外留学で実力と経験を培ってきた人材に対する受け入れ先がない。言い換えるなら彼らを活用する企業、果てには仕事がないために折角の人材を無駄に食い潰している現状があるからです。

 私がこのような主張を展開するのも、私自身の体験から来るものが大きいです。私自身も中国への留学を果たしたものの、こんなブログを毎日書くような資質による影響のが大きいでしょうが、新卒採用では中国語や留学体験を生かせるような職場にはとうとう巡り合うことが出来ませんでした。このことだけが原因ではありませんが、今でも恩は感じていますが拾ってもらった会社を離れて単身で中国に渡り、現地採用の職を引き当てるに至って初めて留学経験を活用できた次第です。
 そしてこれはちょうど二年前の話になりますが、上海でたまたま再会できた留学時代の友人が、「あの時に一緒に留学していた日本人仲間はみんな中国とは全然関係ない仕事に就いていて、仕事で中国語を使っているのは俺と花園君くらいだ」と教えてくれました。その友人によると、自分と彼を除いた留学仲間の中で中国で働いている人間はもう一人いるそうですが、その人は韓国のゲーム会社(確かハンゲーム)の中国法人で現地採用で働いているそうです。もう国籍的になにがなんやら。

 このように留学を果たしたところでその留学経験を活かせる職場は日本だと限られており、極端な言い方すると9割方の人間は関係ない仕事を選ばざるを得ないと思います。私もそうですが、恐らく留学経験者としてはやっぱり自分の努力してきたことを生かしたいと考えるだけに関係ない仕事に就くという妥協はストレスにしかならず、当人にとっても受け入れた会社にとっても不幸な関係になりかねません。では留学体験を生かせる職場を見つけるにはどうするかですが、これは私の実体験から言って、日本での収入の下手したら半分以下になること覚悟で現地採用で臨まざるを得ないのかもしれません。事実、私がまさにそうだったんだし。
 また、運よく新卒時で留学経験を活かせるような職場に入ったとしても必ずしも上手く行くとは限らないということも報じられています。

企業からは「使いにくい」の声も……。“エリート養成校”国際教養大学の問題点(週プレNEWS)

 ちょうどタイミングよくいい記事が出ていたので引用すると、この記事は創立から短い期間で急激に入学偏差値を上げたことで有名な(と言いつつ、今回初めて知った)、秋田県にある国際教養大学(AIU)の卒業生に関する記事です。この大学は学生に対して一年間の海外留学を義務付けているほか寮での共同生活も課すなど面白いカリキュラムがあり、その甲斐あって就職率も非常に良いと評判だそうですが、卒業生らのその後の「社会人生活」はパフォーマンスを十分に生かし切れず、順風満帆とは限らないことが書かれております。
 見出しにもある通り企業側からは「使いにくい」という声が出ているほか卒業生の側からも、

「自分のほかにも日本企業の古い体質と合わずに会社を辞めた人間は少なくないし、みんなが英語を生かせる仕事をできているわけではない」就職四年後に退職した卒業生

 というように語っており、就職において卒業生と企業間のマッチングが上手くいってないことをうかがわせる証言が載せられています。それにしても、週刊プレイボーイはいい記事というかネタを持ってくるなぁ。

日本企業に就職した各国留学生たちの不満が爆発!(ガジェット通信)

 こちらは私も以前に記事を引用してもらったガジェット通信さんの記事ですが、日本にやってきて日本企業に就職した外国人留学生らもなにやらマッチングが上手くいっていないことが書かれてあります。記事によると彼ら外国人留学生らは会社から5~10年は教育期間だと言われ補助的な作業ばかり回されているようで、それに対して留学生の側から出てきた言葉が、

「会社は5年~10年で教育と言っているが、世界の変化のスピードを知らなさ過ぎ。5年も補助的で基礎的な同じことを日本の中だけでやっていたら、30歳の頃には世界に通用しない人材になってしまう」

「せっかく言葉もいろいろ話せるし、母国も経済が急成長していて、自分たちは勝手を知っているのだから、母国の現場を任せてほしい」

「日本の現場を知ってからというが、日本の現場のやり方は自分らの国では通用しない。それに会社にも自分にも時間がないことがわかっていない」

 というような、私としても「うん、そうだね……」としか言えないような言葉ばかりです。

 既に大分長い記事となっておりますのでここらで簡単にまとめると、私から見て日本企業は語学も出来てグローバルな視野を持つ人材を生かしきれないどころか食い潰しかねないような企業風土があり、留学生の供給数を増やしたところで意味がない。それよりも日本企業の思考を転換させて彼らをうまく活用できるような風土を作るなり、こうした人材がパフォーマンスを十分に発揮できるような企業とのマッチングを進めるなどといった努力を先にするべきだと私は言いたいわけです。でなければ極端な話、留学経験のある日本人人材はみんな日本を離れて現地で就職してしまうかもしれず、何のための留学支援なのかという状況にもなりかねません。
 その上で言ってしまえばこうした供給側に対して需要側の調整を行わずに留学生支援を始めでもしたら、現在のロースクール制度による司法試験合格者や公認会計士などのように路頭に迷う人を増やすだけでしょう。なんでもって政府というのは人材に関して需要を考えずに供給ばかり増やそうとするのか気がしれません。

 最後に蛇足となりますが今まさに私自身が日本企業の国際感覚のなさ、ひいては日本の仕事に対する無意味な価値観に直面しております。またきわどいことを言いますが、日本の社会人はその業界、下手したらその会社内でしか通用しない仕事経験をやたら重要視するところがあるように見えます。言ってしまえばそんな仕事経験は業界や会社を離れたら即無価値となるので、それよりも幅広い業界で使えるような知識や経験を求めた方がいいのに、むしろそういったものほど価値がないとして否定するところがある気がします。反発を受けることで主張させてもらえば、「微に入り、細に入る」という価値観はもはや悪習で、こうした価値観を保つ限り日本企業にはグローバルな人材など育たないでしょう。
 内容濃いけど、ほんと短時間ですぐ書けたなぁ(´∀`*)ウフフ

4 件のコメント:

すいか さんのコメント...

自民党は、全ての大学の入試受験資格にTOEFL(英語圏の大学に進学するための英語能力テスト)を導入する、と提案しています。明治時代の政府の要人は、日本を愛し、日本のことを主張するために外国語を学び、美しく品格高い言葉で交流に励みました。学生のアタマのやわらかいうちにいろいろな分野に興味を持ち、それを深めるために外国語の文献を読んだり関係者と話したりするのが外国語習得の目的なのに、不特定多数に留学やTOEFLを推奨するのは、他の学問への興味や時間がそがれ本末転倒です。教育再生が目的なら、少しでも勉強に興味をもちやすい環境を整えることや、人不足の中、生活指導など、教育以外にいろいろな負担のある教師を助けるために同じ税金を使ってほしいです。
ところで、「北京留学記」で、花園さんが明治天皇について説明しているくだりは、かっこいいなぁ~と思いました。

花園祐 さんのコメント...

 自分が言いたいことを全部代弁してくれているようで、非常に助かります。
 英語が出来るに越したことはありませんが、おっしゃる通りに英語以外の知識を持つことによって初めて価値が出ると私も考えており、学生にはなるべく幅広い分野に興味を持ってもらいたいと私も常々思っています。このブログも当初、そういった学生向けに書き始めたのですが、冷静に今思い起こすと、このブログ開始したのは大学4回生の12月からだから、随分と生意気なことを考えながらブログを始めたのだなと今更ながら思います。

上海忍者 さんのコメント...

未来志向に貢献する為に、日本政府が日本人学生を北朝鮮に留学させるべきかと思います。今後親北朝鮮人間が増えると、日朝関係も改善されるでしょう?
因みに、米国、欧州留学はどうでもええわ。

花園祐 さんのコメント...

 昔飛行機ハイジャックして北朝鮮に留学しに行った人たちがいて、日本に帰りたがっているそうだ。今行っても同じことになるだろうし、むしろ君こそ北朝鮮で労働教育を受けてきたらどう?