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2012年7月22日日曜日

尖閣諸島国有化宣言に対する中国の反応

 久々に専門領域で一本とばかりに今回の尖閣諸島ネタですが、いきなり結論を言うと今、非常にまずい状況です。詳しい理由は後できちんと解説しますが、ネットニュースを見る限りだと日本と中国でこの問題に対してあまりにも温度差があり、いまいち危機感が伝わっていないような気がします。

 まず事の起こりはいつごろかは忘れてしまいましたが、石原新太郎都知事が尖閣諸島こと魚釣島を地権者から買収すると発表したことからでした。この発言自体は中国でも大きく取り上げられましたが中国人も石原都知事については前から極端なことを言う人だとの認識がもう持たれていたので、友人が「花園君の言った通りだった」というくらいに誰も本気にせず、日本への批判運動とかもなにも起こりませんでした。
 それが変わったのは石原都知事の発言からしばらく時間が経ち、野田首相が追って「魚釣島を国有化する」と発言してからでした。この野田首相の発言が出てから数日間はどの現地紙も野田首相の写真をトップ一面に飾り、それこそ一挙手一動を報じるくらいの反応を見せました。それと同時にネットなどでも日本批判が急激に増加。街中で日本人だとわかるや怒鳴られたり殴られたりとかはないものの、やはり以前と比べてピリピリした空気は感じます。

 はっきり書きますが、今の中国の日本に対する態度というか意識はかなり危険な状態と言わざるを得ません。先日に有識者ともこの件で会話しましたが小泉首相(当時)の靖国参拝で各地で反日デモが頻発していた2005年時は、「あれは政府がやらせているものだ」と大半の中国人は日本批判に無関心だったのに対し、今の中国のメディアや民衆の日本を見る目は非常に厳しいものがあります。それこそうちの社内でも2010年の漁船衝突事故が起きた時のように、もうひと押しあれば中国政府は日本向け通関を停止させてくるのではないかという意見が出ています。脅しとかそういうものではなく、中国に工場を置いているメーカーなんかは今のうちに在庫を多く持たせるべきだと本気で薦めます。

 ここでちょっと話を整理しますが、私自身はやはり日本人であることと、中国がかつて中越戦争を引き起こして大敗した経緯を鑑みても尖閣諸島は日本の領土だと思います。思うと書くのは私が領土問題や歴史の専門家ではないためで、漠然と一国民として感じるだけだからで、恐らくほかの大半の日本人も同じだと思えるし、中にはテレビや書籍で拾ってきた根拠を挙げる人もいるかもしれません。
 ここで意識してもらいたいのは、こうした意識を中国人も全く同じ形で持っているということです。日本国内のメディアで尖閣諸島は歴史的な経緯から言って日本の物で当然というような話を、中国人も中国のメディアからそのように受け取っているのです。そんな中国人からしたら自国の領土を日本が勝手に国有化宣言して奪い取るように思えて仕方ならず、極端な例を挙げると八丈島とか隠岐の島を中国がいきなり国有化宣言するというくらいに感じてるんだと思います。

 さらに言えば中国は未だに外国人アレルギーというかコンプレックスを持っております。かつて、というか今でも中国はかつて外国に侵略されていいように弄ばされたという風に教えられているので、何か仕掛けてくる外国人に対して強い敵愾心とともに妙な恐怖感を明らかに持っております。特に領土関係においては敏感で、こっちの新聞でも堂々と書かれておりますがもはや軍事衝突もやむなしと本気で中国人も覚悟を決めており、実際に上海市内で「そうなったら戦うしかない」と中国人に言われたという話を聞いております。
 比較的、っていうか中国で最も外国人アレルギーの少ない上海ですらこれなのですが、北京や内陸の地方都市ではもっと程度が激しいのではないかと思います。さすがに軍事衝突は両国政府も望まないでしょうが、さっき言ったように通関差し止めに関してはたとえこの処置で中国もどれだけの負担を払うこととなっても、それもやむなしと中国人は政府を支持するでしょう。

 あともう一言書き加えておくならば、日中両政府はこの問題が白熱化することは双方にとって損だと考えております。この場合の日本政府は外務省、並びに経済産業相といった官僚で、野田首相の腹については私はわかりません。ただ以前に私が日本にはこの問題が解決せずに揉めることで得する連中がいると書いたように、中国にも揉めることで得する連中がおります。はっきり書くならそれは人民解放軍の一部で、彼らが増長することは中国政府としても好ましくはないでしょう。
 この問題を如何に軟着陸させるか、私が考える手段としては国としての国有化はひとまず置いて、石原都知事の好きに任せるのがベストだと思います。仮に都が購入するのであれば政府は関与していないと言えますし、また中国側も石原都知事の主導であれば彼の独走と見えて最悪スケープゴートに据えることもできます。ただ政府が仮に購入したら、中国政府も国内不満を抑えるために何かしらアクションを取らざるを得なくなり、あまり面白くない結果は見えています。

 最後にもう一回書きますが、この問題で中国人の反応は日本が考える以上に敏感です。別に領土問題とか二国間交渉に限るわけじゃないですが、決着をつける気があるなら一撃で物事は仕留めなければなりません。尖閣諸島問題で日本がそれが出来るかとなると、まだ準備不足というのが今日の私の意見です。

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