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2012年2月24日金曜日

搾取する者、される者

 ネット上で大きな騒ぎになっていると同時に、私自身も思うことがあるので今日は下記のワタミ従業員自殺のニュースについて書きます。

ワタミ従業員自殺:ストレス原因と労災認定(毎日新聞)

 詳細はリンク先の記事を読んでもらえばわかりますが、居酒屋チェーンのワタミに入社した女性が入社二ヶ月後に自殺した件についてこの度、裁判所が労災と認定しました。報道によるとこの女性は入社したばかりにもかかわらず月の残業時間が140時間を超えていたとされ、しかも研修らしい研修も受けられず深夜業務を課されていたそうです。
 ネット上では今回の判決を受けワタミに対する批判が集まっているようで自分も一部の掲示板を見ましたが、渡邊会長の過去の発言とよく比較されており、こういってはなんですが不当な批判だとは感じませんでした。いくらか抜粋すると、「自殺が起こる社会というのはなにかが欠けている証拠だ(じゃあお前の会社は何が欠けてるんだよ)」とか言ってたり、部下に向かってビルの窓から突然飛び降りろと命令したりとか。

 そうした議論の中に、「こういう過重労働させられている従業員が多いから、居酒屋チェーンには行きたくないんだ」という意見がありましたが、元々脂っこい料理が嫌いなせいもありますが私も同じ理由で、日本にいた頃は居酒屋チェーンを避ける傾向がありました。特に数年前からはやはり重労働であることからか、深夜時間帯はどこいっても留学生と思しき外国人従業員ばかりが勤務しており、同じ日本人ですら酔っぱらいの相手は大変だというのに、ある意味ではお客さんと言ってもいい留学生にこんな仕事を任せていいのだろうかと強い嫌悪感を感じたこともありました。
 またこれと同時に、居酒屋に限らずこうした外食チェーンの経営者は現場を見ているのか、実際に自分は同じ条件で働いてみたことがあるのかという疑問もよく覚えます。実際に利用して話に聞く限りですが、こうしたチェーン店の従業員の勤務状況はまさに超人的で、体を壊したりしない方が不思議に思うくらいです。それでていて賃金は安いと聞きますし、その上で最近はやたらめったらに妙なクレーマーが増えていることを考えると自分なんかじゃとても務められる自信がありません。

 こうしたことを踏まえて言うと、今に始まるわけじゃありませんが自分より上の世代に「最近の若者は働くことに対する意欲が少ない」とは全く以って言われたくありません。自分たちの世代は上の世代に比べて昇給もなければボーナス額も少ない上、携帯電話とかネットなど変に情報通信機器が発達したおかげで24時間どこでも働けるようになって、労働環境の厳しさは比較にならないほど高まっていると言い切ってもいいです。こんな環境でも文句も言わず働いている自分たち世代と比べると、やる気が低いという事実は認めてもいいですが頑張りが足りないとか言われるのは心外この上ありません。

 さらに踏み込んでいうと、やや古めかしい言い方ですが現代社会では明確に搾取というものが起こっているように感じます。このワタミの例なんか典型ですが、本当に他人を酷使して殺したところで屁とも思わない連中ほど「会社を急成長させた」とか言われてでかい顔しているは非常に気に食わないです。言ってしまえばなんで会社が急成長したのかといえば、その経営者の手腕が優れているというよりは従業員を酷使して、その犠牲の上で成長させたようにしか見えない企業が数多くあります。昔は松下さんがこの典型でしたが、金儲けがうまいと誉めるのはいいけど人格的にはむしろ批判されるべきで、安倍元首相みたいに諮問委員会に招くというのはお門違いもいいところでしょう。

 私は身を削って働くこと、それを推奨することについては批判をしません。そして身を削ってまで働こうとしない自分が、そういうことを是とする人たちに批判されることに対しては甘んじて受けます。だがしかし、他人には死ぬくらい身を削って働くことを強制しておきながら相応の対価を支払わず、自分だけがのうのうとしながら丸儲けをする人間は明確な私の敵です。たとえそれが世の中の常、現実としてそびえているとしても、それを良いと思うかどうかは別です。
 人によってはそうした構図を是認することで競争力が維持され、世の中は回るんだという人もいるかもしれません。しかし自分は、そうやって是認してきた姿こそが今の日本だとみており、ひいてはデフレを起こして競争力が失われたと考えています。またΖガンダムのカミーユ・ビダンじゃないですが、優しい人間のいない世界を作って何になるんだよと言いたいです。自分自身はそれでよくったって、そんな世界を次の世代、今の子供たちの世代に引き継がせていいのかというのが常々主張している私の意見です。

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