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2011年1月3日月曜日

文章表現を鍛えるには

 このブログは他のブログと比して文章量が長め(そのくせ更新も頻繁)のブログですが、ブログに限らず私はプライベートでも以前はよく長い紀行文やら小説などを書いていました。その際によく周囲から、どうすればそれほど長い文章を書けるのかといった質問を多く受けていました。
 結論から言えば、中身を取らないのであれば文章を長く書くにはなんでもいいからひたすら文章を書くに限ります。それこそ人に見せるには恥ずかしいような出来の小説でも日記でもいいから日常的に書く習慣をつけていれば、二千字程度のレポート文などすぐに気軽に書けるようになると思います。

 ただ世の中、そこまで毎日文章を書く気もない人間の方が大半でしょう。そうでなくとも近年は国語教育がいささか疎かになっている雰囲気があり、小中学生では作文なんて真っ平ごめんと思っているのが当たり前です。実際に文章を書き始める前の私もそうでしたが、仮にそういった小中学生らに文章を上手に書かせるためには一体どう教えればいいのだろうかと以前に考えたことがあります。

 指導できる時間は授業時間中に限るとすると、先ほど言ったひたすら書かせるというやりかただと書かせる課題によって個々人に差が出来、あまり効率的ではありません。となると要点をしっかり認識させて短くてもいいから品のいい文章を書ける様にさせる方向がよいと思うのですが、そのためにベストな方法となると真っ先に思い浮かんだのは文章の省略です。
 この指導のやり方は実に簡単で、その日の日記でも評論でも感想文でも何でもいいからとりあえず四百字詰め原稿用紙二枚程度の文章をまず書かせます。書き終わったら今度は同じ内容の文章を原稿用紙一枚にまとめさせます。一枚にまとめ終えたら今度は百文字程度にまとめさせ、という具合に同じ内容でも徐々に書ける文字量を減らして書かせるというやり方です。

 この指導法の妙は同じ内容の文章を文字量を狭めながら何度も書かせる点です。同じ内容の文章なのだから文字量が減らされるとなると元の文章から余計な表現を削ぎ落とさねば書ききれなくなるため書き手には、「何を残して何を削るか」という視点が要求されることになります。残さねばならない箇所は言うまでもなく重要な箇所で、要点を絞ってまとめなおすという作業を行うことになります。
 この元の文章をまとめなおすということ自体は現在の国語教育でも行われていないわけじゃありませんが、その場合に題材に選ばれるのは大抵が教科書に載っている他人の文章で、その際書き手は文章の内容を理解しつつまとめなおすという作業を要求されます。

 しかし最初に挙げた私のやり方では元々自分自身が書いた文章であるため文章の内容を改めて理解しなおすという作業は必要なく、自分の考えなり思考をまとめるという作業に集中することが出来ます。これは文章のみならず自分の考えをまとめなおすことにつながり、思考の訓練にもつながるかと思います。

 よく以前のブログでも書いていましたが、これだけまわりくどくて長ったらしい文章を毎日書いておきながら、自動車の重心が低ければ低いほどいいのと同様に文章というのは短ければ短いほど良いのです。ただし短すぎて内容の理解が出来なかったり周辺の情報を伝え切れなければ意味がありませんが、同じ内容であるのなら短い文章の方が間違いなく格上です。

 文字量を狭めながら文章を何度も書き直させる指導の目的はずばりこの点にあり、要点を絞って書かせるということにあります。しかし要点を絞れといってもいきなり言われても自分の文章であっても急激に絞りきれないのが普通で、そのため徐々に狭めるという段階を経る事で自然にそれを認識させるのがこのやり方の目的です。

 理想を言えば最終的には日本語のリズムの元となっている五・七・五までまとめられればベストかななどと考えていたのですが、去年の十一月、また発表された国際学力テストの結果の報道の際に都内のある小学校における授業の取組みが紹介され、そのとき紹介された取組みというのがまさにここで私が紹介した徐々に文字量を狭めるという指導でした。
 その学校では毎朝児童に本を読ませて原稿用紙一枚程度の感想文を書かせると、徐々に文字量を減らしながら書き直させ続けて最終的には本当に五・七・五までまとめさせているそうです。その指導法だけによるものかどうかはわかりませんが、その学校は他の学校と比較しても平均学力が頭抜けて高い結果を出しているということも合わせて報じられてました。

 正直なところすでに自分が考えた指導を行っているところがあったという事実にまず驚きましたが、きちっと因果関係は図れないもののそれなりの結果を出しているという報道を見てやっぱりそうなのかという気を覚えました。文章というのは小手先の技術である以上に書き手の思考力も如実に現れたりするので、近年は英語教育の導入や増加、また理系離れ対策などが教育界で叫ばれていますが、文系出身文学部卒(専攻が社会学なのは文学部社会学科だから)の私としては作文教育の徹底こそが今の日本の教育に必要だと強く主張したいです。
 その一つの方法として、すでに実施している学校とともにこの指導法を紹介したかったわけです。

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