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2010年9月29日水曜日

昔に釣堀でやらかした事

 たしかあれは私が小学六年生くらいのことだったと思います。その年の夏に私は両親と姉との四人で国内旅行に出かけて温泉地へ赴いたのですが、一泊した帰りに観光地の釣堀に寄って行って釣りをする事にしました。釣りをすると言っても釣堀なので魚はすぐにかかってくれるのですが、引き上げるともなると細い竿を持ち上げねばならないので見た目ほど楽ではあらず、それが故に私はある悲劇を起こしてしまったのです。

 釣り糸を垂れて数分後、早速私の竿に魚が引っかかってくれたので私は釣り上げようと竿を持ち上げたのですが、情けないことに小学六年生の私の腕ではまっすぐ持ち上げる事が出来ず、魚が水面から飛び出して重量が竿にかかるや体勢がふらつき、私は持っていた竿を支え切ることが出来ず横に流すようにそれを振ってしまったのです。自分でも内心しまったと思ったのですが釣針に刺さった魚は離れず、そのままぐいーっと竿が右に流れていく方向に、何故かうちの姉が立っていたのは運命だったのかもしれません。

 私と同じく釣堀で釣りをしていた姉の目からすると、まさに空中を泳ぐように魚が迫ってきた様に見えたでしょう。しかもちょうどいい具合に姉の顔面くらいの位置に魚を持ち上げていたので、姉は咄嗟に顔を背けたものの体長20cmくらいの魚は姉のほっぺたにモロに直撃しました。しかも一回跳ねて魚が姉から離れればよかったのですが、運の悪いというか私が釣り糸で中途半端に魚を持ち上げていたからか、姉のほほを思い切りそのヒレで叩いた魚は釣堀に戻ることなくそのままの位置で跳ね続けて、ちょうど姉の首から鎖骨の辺りでビチビチと踊るように魚は跳ね返り続けました。

 姉の泣きそうな悲鳴をよそ目に、あまりの事態に私は竿を持ったまま呆然と立ち尽くして見ていました。その横では親父も笑ってるし。
 時間にして実に一分間以上、釣られたまま姉をしこたま叩き続けた魚はようやく針が抜けて再び釣堀に落ちることでこの悲劇は幕を閉じました。それにしても魚が落ちてからようやく気がついたのですが、姉に魚がぶつかった時点で私が竿を左に戻しとけばああも長く姉は魚に叩かれ続ける事はなかったことでしょう。

 今思うと、仮にあの位置に姉ではなく赤の他人が立っていたらえらい事になっていたでしょう。それと共に、実にいい位置に姉貴は立ってたなぁという気がします。ビデオに撮っとけば絶対投稿番組で採用されるような映像になっていただろうし。もちろんこの後、首の辺りにうろこをつけて戻ってきた姉に私はこっぴどく叱られましたが、未だにあの時の情景を思い出しては噴出してしまいます。
 はっきり言って我々はあまり仲のよくない姉弟でしたが、この件に関しては本当にいい思い出だったと胸を張って言えます。姉からすると嫌な思い出以外の何者でもないだろうが。

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