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2010年8月21日土曜日

中国工場でのストライキ続発について

 これまたちょっと古いニュースですが今年に入って中国の外資系工場でストライキが多発している事が報道されるようになり、中でもホンダの部品工場の例は日本の大メディアなどでも大きく取り上げられていましたが、この中国で起きたストライキに関する報道を見て私が感じたのは他のメディアが言っているような中国人労働者の待遇問題とかそういったものよりも、中国政府が外資に対して対応を変えてきたなという考えが一見して浮かびました。

中国、外資でスト多発 日系が7割、ネット・携帯で連鎖(朝日新聞)

 今月の文芸春秋でもこの中国のストライキ問題が取り上げられており、内容を簡単にまとめるとストライキの主役は20代前半の若者たちばかりで、彼らは上記リンクに貼った記事に書かれているように携帯電話やインターネットなどを駆使して互いに連携を取ってストライキを起こして雇用側に給料や待遇改善を要求した。これらのストライキが起こるようになった背景として中国での一般の若者の教育水準が上がり、労働に対価が見合っていないと感じると以前以上に不満を覚えるようになっている……といった感じです。
 この記事は実際に現地で取材された方が書いていて決して記事の内容が的外れだと言うつもりはありませんが(何故か記事の冒頭に記事を書いた女性記者の笑顔の顔写真があったのが気になったけど)、もう少し掘り下げた見方があってもよかったという気がしました。

 私もあまり偉そうに言える立場ではありませんが、このストライキ事件の報道を見て私がまず最初に気になったのは、ストライキが起きたとされる工場が全部外資系だったということです。
 当初の報道では外資系工場では本国の社員(ホンダだったら日本人社員)に対して中国人労働者の給料は著しく低く、そういった賃金格差からくる不満がストライキに繋がったと一部では言われていました。しかし賃金格差なんて何も外資系に限らず中国では沿岸部と内陸部では本当に同じ国かと思うくらい差があり、中国系工場であっても監督を行う工場長と労働者の間では中国人同士でも大きな差があるとも聞きます。それにもかかわらずどうして外資系だけでストライキが起こったのか、言ってしまえばどこかの外資系工場が発端となったとしても中国系の工場に波及することも十分考えられます。

 結論を言うと、今回のストライキ騒動は中国政府が格差に不満を覚える底辺労働者たちへのガス抜きとばかりに外資系工場でわざと誘発させたのではないかと私は考えました。もしくはストライキ自体は中国系工場を含めかねてから各所で起こっていたものの中国政府はこれまでそれを一切報道させなかったが、今回やはりガス抜きのために外資系工場でのストライキに限って報道を認めたのではないかと思います。

 そもそも中国ではストライキに対してちょっと特殊な事情があります。現在の中国は紛れもない資本主義国家ですが一応は社会主義国という建前のため、労働者主役の国でストライキが起こることはありえないと言い張ってて憲法でもこういう論法でストライキ権が認められてないそうです。そのため断言してもいいですがこれまで中国でストライキが起きたということは公式的にはないとされ、報道も「違反をした雇用者に対して労働者が対抗した」という事例以外は一切ないと思います。

 それが今回どうして報じられるようになったかと言うと、同じ中国国内であまりにも広がった格差とそれに対する不満を少しでも和らげるために、労働者側がスカッとできるようにストライキが一部成功したというニュースが必要だと中国政府が考えたのではないかと思います。ただそれが中国系企業だとやっぱりまずいので敢えて外資系に絞り、「ずるい外国人が中国人から搾取していた」という組み立てで報道を認めた、というのが私の大まかな見立てです。

 私がこう考える根拠はというと、最初にリンクを貼った朝日新聞の記事の内容です。見出しにもある通り今回のストライキはホンダを初め外資は外資でも日系の企業に七割も集中しています。これは何故かと言うと先ほどの考えに則ると、中国政府としては日本は叩きやすい存在で、元々中国国民は一部で反日感情を持っているからガス抜きに使いやすく、またストライキが大きな問題となっても欧米と比べてあまり文句を言って来ない、という風に中国政府が考えたんじゃないかなと。

 あくまで今日ここで展開した話は私の意見で必ずしも正しいという可能性はありませんが、仮にこの考えの通りであれば中国政府はこれまで割と積極的に受け入れてきた外資に対して対応を変えてきた、ストライキを誘発させてくるようになったとも考えられ、今後の日中貿易を考える上でも見捨てては置けない事件だったのではないかというのがいつもの通り回りくどい今日の私の意見です。

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