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2010年2月15日月曜日

移民議論の道標~その三、国籍の決定条件

 なかなか前置きから抜け出せずにいますが、このあたりは移民を考える上で決して外してはならない非常に重要なところなので前もって解説をしておきます。
 さて一口に「移民」という言葉の定義を出すとしたら単純に、「国籍の違う人間が外国で定住する、もしくは働く」といったところでしょう。この定義の中に出てくる「国籍」という条件が移民を考える上で非常に大きな要素になることは疑いもないのですが、この国籍がどのように決まるか、またそれがどのように世界で扱われているかという点について意外と知らない人が多いのではないかと思います。

 まず日本人が見落としやすい事実として、グローバル化の中で海外ではすでに二重国籍がそれほど珍しくなくなってきております。二重国籍とはその言葉の通りに異なる複数の国の国籍を同時に持つということで、これを認めている代表的な国は言わずと知れたアメリカです。
 現在の日本では両親が日本人であるもののアメリカで生まれた人間については日米の二重国籍を認めていますが、成人後には日本、もしくはアメリカのどちらかを自分の国籍として選ばせており、基本的には日本単独の戸籍は日本人にしか認めておりません。

 ここで早速出てきましたが国籍は出生時に決まるのですが決め方には主に二種類あり、それぞれを「血統主義」、「出生地主義」と呼んでおります。
 前者の血統主義は両親、もしくは父親か母親のどちらかがその該当する国の国籍を有している場合、その子供にも国籍が認められるという考え方で、現在の日本の制度はこの血統主義に基づいております。それに対して後者の出生地主義は両親がどこぞの誰であれ、その国の領土で生まれた子はその国の国籍が認められるという考え方で、これなんかは先ほどの例に出てきたアメリカやブラジルといった国々です。

 そのため一時期流行っていて多分今でも続いているでしょうが、日本人の両親がハワイで子供を出産すると先ほどの二重国籍扱いとなり、将来的に日本国籍を維持するのであればアメリカ国籍を放棄しなければならないのですが、それまでであれば両国の国民が持つ権利を自由に行使できる立場になるのです。まぁうまい話には必ず落とし穴があるのが決まりで、権利を得られる代わりに義務も課されることとなるのでアメリカで徴兵が行われたら従わなくちゃいけなくなるというわけですが。

 この国籍の決定条件がどのように移民に影響を与えるのかですが、仮に出生地主義を採用している国で移民が行われた場合、その国に乗り込んできた移民一世は外国籍のままですが日本で働きながら子供(移民二世)を生むとその子供は移民先の国籍が得られることとなります。またこの場合、子供がその国の国籍が得られるのに親が外国籍のままというのはあんまりだということで、子供を生んだ場合は親にも国籍が認められる国もあります。
 しかしこれが血統主義である場合、たとえどれだけ長い期間移民先の国で働いたとしても移民一世はおろか、移民先の国で生まれ育って両親の母国に一度も行ったことがない移民二世も国籍が得られるわけでなく、母国が出生地主義を採用している場合には下手すりゃ無国籍扱いになってしまう可能性すらあります。

 そのため現在の日本なんかが典型的ですが、血統主義国では移民というよりも出稼ぎの受け入れという形で外国人労働者を雇い入れることが多くなります。もちろんどの方式を採用するかはそれぞれの国の自由ですが、フランスのように条件付で出生地主義を採用している国と比べると現状の日本は少子化に対応した移民政策ではないということがわかってきます。
 こういったところが移民議論の大きなキーポイントとなるのですが、単純に短期の出稼ぎ外国人を大量に受け入れるか、少子化の是正も踏まえてそのまま日本に根付いてくれるような外国人を受け入れるのか、その目的によってこの国籍条件は再考する必要が出てきます。

 ただ面白いことに、日本とドイツは血統主義を採用しつつ移民を受け入れるという政策を続けております。ここまで言えばわかるかと思いますが日本の場合それは日系ブラジル人移民のことで、明日にはこの件についてあれこれ解説します。

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