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2010年2月12日金曜日

移民議論の道標~その一、導入

 前からやろうやろうとしながら先延ばしにしてきましたが、そろそろ腹をくくってこのテーマについていろいろ書こうかと思います。
 さて現在、与党民主党が地方参政権を永住外国人を始めとした日本国籍外者にも付与しようという政策を掲げたことから海外から移民を本格的に受け入れる準備を始めたのではないかと、インターネット上のみならず保守系評論家からも激しく批判がなされております。民主党が本当に移民を受け入れるかどうかは別として、確かにこの地域参政権の永住外国人への付与は移民を受け入れていく上では加速させる政策にはなるでしょう。

 そのような移民の受け入れについて、現状で日本人の大半は反対、少なくとも受け入れるべきだという人間はごく少数しかおりません。移民に反対する理由の多くは移民に混じって犯罪者がやってきて治安の悪化が起こるという理由や、先ほどの地域参政権の話と絡んで日本が内部から外人、それも主に中国や韓国といったアジア圏の国の人間に政治に介入されて国の内部から崩されるといった意見がよく上げられているように見られます。

 ここでいきなり結論なのですが、私は現段階で地域参政権を認めることには反対ながらも、将来的に日本は規模についてはともかく移民を受け入れるべきだと考えております。
 一体何故私がこの様な意見を持っているのかについてのみ説明を行ってもいいのですが、それ以前に私は、決してこの方面の専門家でないながらも現在の日本におけるこの移民を巡る議論はどこか焦点がずれているのではないかと前から感じていました。

 いくつか具体例を挙げると、まず移民受け入れ反対論のほぼ八割は治安の悪化だとして中国人、韓国人犯罪者の問題を取り上げる人間が多いのですが、事実上の移民である日系ブラジル人労働者がこの手の議論ではあまり俎上に上がってきておりません。決して日系ブラジル人が悪いと言うつもりはないのですが、国籍別外国人居住人口では大きな増加率を続けている国であり、ちょうど先月にも大きくニュースになりましたが死亡ひき逃げを始めとした大きな刑事事件もこのところ頻発に起きております。

3人死亡ひき逃げ、容疑者送検 運転のブラジル人(47ニュース)

 こっちは言い方は悪いですが、中国人や韓国人犯罪者による治安悪化を理由として移民に反対している日本人の多くは、移民がいいか悪いかというよりもナショナリズム的な意識から反対しているのではないかという気がします。確かに外国人居住者の犯罪率は通常の日本人より遥かに高く憂慮すべき問題ではありますが、私は移民議論で本当に重要となるのは、どうやって優秀で善良な外国人労働者を受け入れていくかという点にあると考えており、犯罪率が高いからといって脊椎反射的にすぐ移民に反対だというのは気が早過ぎるでしょう。

 またこの手の議論でよく、「フランスは移民を受け入れて見事に失敗したじゃないか」という意見が目に入るのですが、前からこの意見に対して、「移民を受け入れている国は他にもあるのに、どうしてフランスばかりが取り上げられるんだ?」ときな臭く感じており、一体どのような点で失敗したのかという個別具体的な意見となるとなかなか見当たらずずっとこの意見を疑問視しておりました。逆にリンク相手の「フランスの日々」のSophieさんをはじめとしてむしろ現地に在住している人ほど移民に対して肯定的な意見をしており、仮にフランスが失敗したというのならばそれを反省材料にしてより優れた政策に変える努力があってもいいのだし。
 少なくともフランスは、移民を受け入れてサッカーではジダンを手に入れたわけだけど。

 実際に移民を受け入れている国はフランスに限らず先進国ではドイツやイタリア、また同じ島国のイギリスも多種多様な人種を抱えております。そして何より、最大の移民国家であるアメリカがどうしてこの手の議論で出てこないのか、この辺に私は日本の移民議論において一種作為的なものを感じます。もちろんアメリカは建国当初より移民国家で黒人問題を始めとした長い歴史を持つ、移民国家としても特別な国ではありますが、移民の受け入れにおいてどこが特別でどこが特別でないのかで議論から外したりせず、もっと遍く例を比較して議論をするべきだと私は考えております。

 そしてなによりも、日本は望むと望まざるを得ずすでに一定数の移民なくして成り立たない状態にまで来ています。自動車産業や繊維産業の各企業ではすでに賃金の安い日系ブラジル人労働者なくして経営は成り立たないとまで言われており、また国家のライフラインともいえる第一次産業の農業においてすらも外国人研修制度でやってくる中国人労働者が各方面で支えており、このまま中途半端な状態で受け入れを続けるよりも、もっと本格的に議論を行ってどうせ受け入れるのであればマシな形にしていくべきではないのかというのが私の考えです。

 そういうわけで浅学ではありますが、あれこれ批判が来るのは覚悟の上でこれからしばらく移民について議論すべき問題と現状について記事を書いていこうかと思います。このせいでしばらくはまた時事系ニュースが書く量が減ってしまうかもしれませんが、その辺はSOFRANがきっとカバーしてくれると勝手に信じています。

  おまけ
 2006年のワールドカップにてジダンが頭突き問題を起こした際、一体ジダンは何を言われてあんなに怒ったのかという議論にて、
「お前アルジェリア移民のくせに、頭の方はナイジェリアだよな」
 という意見が、誠に不謹慎ながら私の中で一番面白かったです。

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