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2010年1月30日土曜日

労働組合は誰の味方?

 先週くらいから各所のニュースで、「今年も春闘が始まり、労働組合側は定期昇給と雇用の維持を訴えていく模様です」といった報道を耳にすることが増えました。
 一応前もってこの「春闘」という言葉の意味を説明しておくと、毎年二月から三月の間に労働組合が経営陣に対して今後の労働条件の改善などを要求する労働運動のことで、メーデーにおけるストライキがほぼなくなった現在においては日本において最も大きい労働運動といっていいものを指します。具体的な要求は基礎賃金やボーナス額の引き上げ、労働時間の短縮など、末端の労働者の待遇改善が主に運動の建前とされております。

 それで今年の春闘についてですが、リーマンショックから続く不況によって企業の業績はどこも悪いということからさすがに基礎賃金の引き上げなどは求められず、従業員のリストラこと首切りの禁止と勤続年数によって自動的に上がっていく定期昇給の維持のみが労働組合より求められていくだろうと報じられております。
 この今年の春闘について私は、多少不謹慎な発言かもしれませんが、各労働組合が経営側に要求をすればするほど、本当に社会の末端にいて厳しい立場におかれている若者や労働者達はより追い詰められていくことになると見ております。一体何を言っているのだろうかと思われるかもしれませんが、私は現在の労働組合の要求は中位層から上位裕福層への要求であって、決して下位貧困層からの要求ではないと考えております。

 まず大前提として、日本のほとんどの労働組合はその会社にて正規に雇用されている正社員のみしか加入できず、現在において若者の大半、労働者全体で見ても2009年で33.3%(総務省調査 引用:社会実情データ図録)を占める非正規労働者は加入していないというのが現状です。ちなみに先程の総務省のデータですが、前からここは非正規労働者の数をしょっちゅういじくってて実態的にはすでに過半数を超えているのではないかという声が多いです。事実20代に至ってはそういう数字になっていますし。

 このように大半の日本の労働組合は正社員のみで構成されているため、これまでにも散々指摘され続けてきましたが同じ職場にすでに数多くいる非正社員労働者の待遇改善についてはあまり熱心ではなかったとされます。こんなブログを書き続けながら具体的に組合活動をしたことがない私が言うのもなんですが、外から見ている限りこういった指摘は日本の労働組合に確かに当てはまり、末端の労働者を守るという建前を掲げながら実態的には本当の弱者を切り捨てながら保身を図ってきたというのが実体ではないかと見ております。

 そこで今回の春闘の要求ですが、先程も述べたように今年に労働組合が主に要求するのは雇用と定期昇給の維持で、これらは仮に通ったとしても正社員にしか適用されない要求です。しかも雇用や定期昇給を維持すれば必然的に企業が負担するコストは高まるためにどこかでそれを転化する必要があり、回りまわってそれら増大するコストは非正社員の削減につながっていくのではないかと私は見ております。
 また更に言えば社員の雇用を維持することはこちらも必然的に新規採用を絞ることにつながっていき、今も話題になっていますが大学新卒者や現在無職の求職者の就職への門戸は更に狭められていく可能性があります。特に日本は過剰ともいえる新卒主義が浸透しているため、新卒一年目で職に就けなかった学生は今後非常に厳しい立場に置かれることも予想されます。

 そのため今回の春闘は穿った目で見ると、すでに正社員となっている者ら社会的中位層が非正規社員や新卒学生、無職者ら下位層を切り捨てる代わりに経営陣ら上位層へ現状維持を求めている構図になるのではないかと思います。少なくとも現在の労働組合の要求は中位層の利益には適っても下位層の利益には必ず通じないということは断言でき、それがゆえに両者が協調することは難しい、というかありえないでしょう。

 ここから私の意見ですが、こんな時代だからこそ正規、非正規を問わずに労働者は団結して経営者と交渉する必要があり、雇用の維持という点で共同戦線が張れないのはわかりきっていること(非正規労働者の雇用や昇給も維持すると会社が倒産しかねないため)なのだから、過重労働の禁止などある程度お互いに一致できる目的を持って要求していく方がずっと建設的ではないのかと思います。
 少なくとも今のままでは非正規雇用率や無職率の高い、本来これからの未来をになっていく若者は追いやられていく一方で、何かしら対策を打たねばならないと強く感じます。

  おまけ
 この前昔のニュース記事を読んでいたら、ほんの二年くらい前には、「若年労働者への技術の継承が今後の日本企業の課題だ」とあちこちで言っていたのを思い出し、最近だと全く言われなくなっていることに気がつきました。恐らく技術の継承はほとんど出来てないでしょうが、継承どころか企業そのものが潰れかかっていてそんな余裕もなくなってしまっているんだと思います。

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