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2009年10月5日月曜日

中高一貫教育の報道に思う事

 以前に新聞社に勤めている方から、こんな話を聞かされました。

「今どこの新聞社も、大学に足を向けて寝る事はできない」

 この発言の意味というのは、新聞社の収入の中で大きな比重を占める広告費が不況のために企業からの受注が年々減り続ける中、大学を始めとした学校からのものは逆に一貫して伸び続けていて、広告費全体に占める割合も大きく広がっているという事からでした。その方によると、今時二面カラーの全面広告を打ってくれるのは有名私立大学くらいなものだそうで、実際に私も新聞を見ていてそのような気がしますし、電車内の広告ともなると私立の大学のものが近年随分と目に付くようになってきました。

 それにしてもこれほどまでにあちこちで貼られている大学などの広告を見るに付け私が思うのは、政府からの教育助成金が削減されているために教育の質が落ちていると各所で言う割に、学生募集を謳う広告費を出すだけのお金は潤沢にあるんだなという皮肉ににた感慨ばかりです。こちらは今度は広告代理店に勤めている方から聞いた話ですが、今の大学は確かに経営的には非常に追い詰められているものの下手な企業よりは現金が豊富にあり、本人らも生き残りをかけて学生の獲得に励んでいるそうなのですが、そうやって広告で学生を集めるより、もっと自分らの研究、指導実績で健全に学生を集めるべきだと私は思います。

 ただそうした広告にお金をかけるという経営判断を下すのはほかならぬ大学自身なので、そんなところまで一個人である私がとやかく言うのもなんなのでこれまで気にせずに取り上げてこなかったのですが、この前ふとしたことから、もしかしたこの状況がある方向に報道を固定しているのではないかという疑念が湧き、こうして記事にまとめる事にしたわけです。その疑念というのも題にある通り、中高一貫教育に対する報道についてです。

 受験者募集を広告に謳うのはなにも私大だけでなく、最近は受験者数の増加に伴って私立中学、高校も新聞や車内広告を多く打つようになってきました。そうした広告が果たして受験者数の増加にどれほど貢献しているかは分かりませんが、各学校法人が以前より広告にお金をかけるようになったのは間違いないと見ております。
 そんな学校法人から受注を受ける新聞社ですが、新聞社の方は折からの部数減少に加えて企業からの広告受注の減少によって今はどこも赤字経営が続いていて、最初の新聞社勤務の方の言われるとおりにもはや学校法人なしには経営が成り立たないとほかのところからもよく聞きます。

 これは何も新聞に限らずテレビなどのどのメディアでもそうですが、お金を出してくれるスポンサーという関係上、広告主を怒らせて広告を引き上げられては大変なので、たとえ広告主の不正や問題が発覚したとしてもメディアは率先してその事実を報道しようとしない言われております。私はその時代に生きているわけじゃありませんが、公害問題が全国各地で起きていた際にもその公害を引き起こした大企業をスポンサーに持っているメディアは報道を控えていたらしく、水俣病も今でこそ代表的な公害事件として認知されておりますが、引き起こしたのが大企業のチッソであったことから発生当初、大新聞はほとんど取り上げなかったそうです。
 それがため雑誌の「週間金曜日」などは広告費を一切受け取らずに購読料のみで運営されていますが、このようにメディアにおける広告というのはある程度報道を偏向させるきらいがあると言われています。

 こうした広告における前提を踏まえてみると、どうもこのところの中高一貫教育に対する報道はもしかしたら偏向があるのではないかと、一昨日に突然閃いたわけです。本当に何度も書いてある通りに私も私立の中高一貫校に中学から進学しましたがお世辞にも面白い学校というわけでなく、また自分の学力の向上につながったかといえばそれも非常に疑問でした。なにせ、中学高校時代もずっと予備校に通っていたわけですし。
 また私と同じく別の中高一貫校に行った友人もあまり母校を評価しておらず、確かに私立中高に行って良かったと思う人も少なくないかもしれませんが、中には私らのように良い思いをしなかった人間もそこそこいると思うのです。実際に私の小学校の頃の友人は、私立中高に進学したものの登校拒否になってしまいましたし。

 それに対して近年の新聞、テレビといったメディアの中高一貫教育への報道は、はっきり言って肯定的な報道以外ありえないと断言してもいいくらいに良い面しか報じておりません。もしかしたら私らのような否定派の意見が本当に極少数であるのかもしれませんが、中高一貫教育のデメリットに対する報道がこれほどまでに全くないというのはさすがにやりすぎなのではないかという気すらするほど徹底されております。
 そこへきて最初の広告の話です。先にも言ったとおり、今の新聞社の広告収入ははっきり言って学校頼みです。そんな状況下で、スポンサーである私立中高に真っ向から対峙する事になる中高一貫教育を批判することができるのでしょうか。それよりもむしろ、スポンサーの意向に沿う形で中高一貫教育の有効性を訴える報道をするというのが自然な流れに見えます。

 これまで広告費における弊害は大企業との癒着ばかりに目が行っていましたが、こうした教育問題全般に対してももう少し目を光らせておくべきではないかと、感じた次第です。

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