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2009年9月1日火曜日

懐かしがる時代とは

 今日から新たなラベルとして「時間の概念」を設けることにしました。昨日の「クレヨンしんちゃん、モーレツ大人帝国の逆襲」の私的解釈」の記事に続く形でこれからちょこちょこ時間をテーマにして書いていくつもりなのですが、自分の表現力が追いつけばそこそこいい内容に仕上がる自信はあります。
 ちなみにこの時間の概念、このテーマについて私が一番力を入れて取り組んだのは3年くらい前ですが、その際は非常に頼りがいのある友人とそれこそ夜中中ぶっ通しで議論することでいろいろなものをつかめることが出来ました。別にこれに限るわけではありませんが、人間がその能力を意識的に発揮させることが出来るのは恐らくは80%くらいで、100%の力を発揮させるには自分に伍す相手なくしては無理ではないかと思います。

 そんなわけで本題に移りますが、今日は現代の日本人が懐かしがる時代について解説します。
 前回の記事で取り上げた「モーレツ大人帝国の逆襲」では万博を模したテーマパークに大人が強くひきつけられるさまを描いていますが、このような作品は何もこれだけに限らず、安倍元首相もハマった映画の「ALWAYS~三丁目の夕日」も、似たような時代を取り上げています。
 何故これらの時代がこうしていろんな作品に取り上げられるのか、その答えは言ってしまえば「高度経済成長時代」だったからに尽きるでしょう。60年代から70年代はそれこそ企業は何もしなくとも売り上げが伸び、また日本の国力、技術力も世界中を席巻しはじめて真面目に生きてれば日本の未来はバラ色間違いなしとも言うような時代でした。

 私は以前にも「日本語の「懐かしい」の価値」の記事の中で、日本人は外国人と比べて過去に対して特別強い感情を持っていてそれが「懐かしい」という言葉が強い意味を持つところにも表れているのではと主張しました。この辺の文化的特徴はまた今度に詳しくやりますが、そんな日本人が現代において特に強い執着を持つのが高度経済成長時代というのはほぼ間違いないと確信しております。
 そこでこの前ふと思い直したのですが、逆を言えばこの高度経済成長時代以外にみんなに懐かしがられる時代はあるのかと、ある日ふと考えました。かろうじてそうと思われる時代は90年前後のバブル時代ですが、それを除くと高度経済成長時代以外にはあまりそういった特定の時代は見当たりません。というよりも、戦前戦後直後に至っては「あの頃は良かった(*゚∀゚)ノ」という発言自体全く見当たりません。

 もう結論をさっさと述べてしまいますが、私は日本人は確かに過去の時代に特別に郷愁の念を持つ傾向はあるものの、高度経済成長時代を見てしまった現代人はその傾向が特に強いのではと思うわけです。確かに誰だって「隣の花は赤い」とばかりに現在の状況と比べて昔はよかったと思うかも知れませんが、日本においてはあまりにもうまく行き過ぎた高度経済成長時代からバブル期までを見てきた世代からすると、現在の日本の状況はそれこそ現実逃避したくなるような時代に見えるかもしれません。

 私などは80年代初期の生まれで物心つく頃から日本は不況の真っ只中で、郵政選挙直後の05年から06年は日本が好況だったといわれてもほとんどそれを実感することが出来ませんでした。しかし現代の日本人、というより現代においてそこそこ年かさがいった日本人からすると高度経済成長時代は過去の物として忘れるにはあまりも良すぎたゆえに、今の私の目から見て現代日本人は過去に囚われがちなのではないかということです。
 これまた逆に言えば、あと10年位経ってバブル時代に勤労者の立場でその旨みなり様子なりを体験出来た世代が表舞台から退場すれば、こうした日本人の過去を極度に美化したり懐かしがる傾向にやや歯止めがかかるのではないかとも思います。

 最後に時事問題に重ねて言うと、やっぱり今の日本の政治はこれから日本をどのような方向に持っていくかというより、どうやって過去の栄光や社会を取り戻すかという主張ばかりな気がします。若けりゃいいってもんじゃないけど、今の日本の政治家の高年齢ぶりはやや目に余りますし、もうすこししんのすけみたいに「オラたちの未来を奪わないで」といえるような若い政治家が欲しいところです。

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