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2009年8月11日火曜日

目指すべき国家モデル

 ちょっと前の記事にて私は現代の政治家で大きな国家モデルをはっきりと打ち出しているものはいないと主張しましたが、それが具体的にどのようなものなのかをちょっと簡単に説明します。簡単にとは言うけど、どうせまた長くなるだろうな……。
 まず大きな国家モデルというのは具体的にどのようなものなのかですが、いってしまえば十年、二十年先くらいを見越してどのような方向へ国を進めていくかと言う考え方です。といってもこんなこと説明じゃ自分でもよく分からないので、いくつか具体例を以って説明いたします。

 まず日本でこの国家モデルが最も議論されたのは戦後の独立回復後です。昭和史家の半藤一利氏によると、戦後の日本においてサンフランシスコ平和条約時の首相であった吉田茂は外交や国防といった安全保障はアメリカに一任し、日本は持てるお金をすべて経済振興に使うべきだと考えていました。それに対して吉田のライバルの鳩山一郎は日本人自らの手で憲法を作り直し、軍備もそこそこ持って独立国家らしくアメリカに頼らずに独自に外交の出来る国家を目指していたために吉田と激しく対立をしました。この二人の争いは吉田が首相から退いた後にかわりに首相になった鳩山一郎が短命政権で終わったために吉田の勝利となったわけですが、その後の岸信介はむしろ鳩山の路線を引き継いで安保改定を行ったところ、知っての通り安保改定それっきりで憲法改定にまでは至らず、その次の池田隼人は吉田学校の優等生というだけあって吉田の路線を踏襲し、現在に至るまでの日本の体制を磐石としたわけです。

 この吉田と鳩山がそれぞれ目指した国家モデルを簡潔に言い表すと、私の解釈では下記の通りになります。

・吉田モデル:軽武装アメリカ寄り重商主義国家
・鳩山モデル:中武装独立国家

 こうしてみると吉田茂が経済成長を重視したのに対し、鳩山一郎は独立外交を重視していたことが見えてきます。実際に鳩山は日ソ共同宣言のためにソ連に赴き国連加盟の礎を築いたことからこの見方に間違いはないでしょう。
 このように、どのような国家モデルの方向に国を導いていくのかによってその後の国家の運命はいろいろと変化してくるわけです。仮に鳩山のモデルが日本で実現していた場合、戦後に自主外交を主張したフランスのようにアメリカともやや距離を置いた国になっていた可能性があります。

 では現在の日本は、一体どのような国家モデルが提唱されているのでしょうか?
 はっきり言ってほとんどの政治家はこの点についてなにも言及しておりません。しいて挙げるとしたら首相就任前にその著書「美しい国」を出版した安倍晋三元首相くらいですが、この人の場合は目指した国家モデルがあまりにも抽象的過ぎて未だに私もよく理解できていません。多分本人もあまり考えずに遠視的に考えていた気がします。

 国家モデルを考える上でいくつか重要な要素を挙げると、国防、税率、権力体制、予算使途といったものが挙がってきますが、今度の選挙で争点にならなければいけないのになっていないのは税率で、逆にそこそこ争点になっているのは権力体制といったところでしょうか。霞ヶ関の中央集権体制か地方自治体への分権か、この点なんかは今後の日本を占う上でなかなか重要な点だと考えております。

 ちょっとこの記事は説明がややこしいのもあって敢えて表現のギアを挙げて一気に運びました。この国家モデルについては一体どのようなバリエーションがあるのかなども実はすでに用意しているのですが、あまりややこしくしてもしょうがないので今日は省略します。もしリクエストがあれば別の記事にてそれらをまとめて放出するので、興味のある方はコメントにでも一言をお願いいたします。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 現在の日本における、国家モデルを考えている人は少ないのかもしれませんね。だから、国民に「あれはやらないのか?」と言及されることを恐れ、完璧なマニフェスト(実現不可能なもの)にしているように見えます。票を集めるためにあきらかな嘘をつかなければいけないのは、いかがなものかと思います。

 実際に民主党のマニフェストをネットでみたのですが、達成できるものがあるとは思えませんでした。そのうちのどれかひとつに集中的に力をいれれば、10年かけてできるかなって感じでした。
 政治ってやつはって感じですね・・・。

 しかし、政治について考えることはやめないつもりです。それが日本の政治なのですから、その国にいるものとして最低限の知識は常に持っていたいと思います。そこで、質問です。花園さんの考える国家モデルとはどういうものですか?

花園祐 さんのコメント...

 わざわざ合いの手をありがとうございます。自分の考える国家モデルは明日あたりにちょっと書いてみます。

 私も政治について考えるのは、少なくとも大学に行ったことのある者なら最低限考えなければならないと思います。ケネディを気取るわけじゃありませんが、国が何でもかんでもしてくれるわけじゃなく、自分たちが国に対してどう盛り立てて国民全体に貢献できるか、一人一人が自立心を持ってないと世の中面白くないでしょう。