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2009年8月10日月曜日

中国ウイグル自治区問題の対立構図

 本店の方でコメントを頂いたので、もうすこしこのウイグル問題について解説を行っておきます。

 コメントを頂いたのは「共同体の壁」の記事ですが、この記事の中で私は日本でも全くないわけではないのですが宗教や民族といった強固で大きな枠での争いを見ることが少ないために、こうした枠の対立構造に対して理解しにくい傾向があると主張しました。実際に私がメディアなどを見ているとこうした戦略的とも言うべき大きな構図を以って解説しているニュースは少なく、それがために先月に起こったウイグル自治区の暴動も「中国政府の人権弾圧に反抗する暴動」ですべて完結してしまったのではないかと見ております。

 ではあの時、というより現在進行形のウイグル問題とはどのような対立構図なのでしょうか。まず日本での一般的な見方では「中国政府VS少数民族のウイグル人」が圧倒的に強いでしょう。しかしこれを敢えて民族という枠で見ると、現中国政府はまさに漢民族の政権であるために「漢民族VSウイグル族」という対立構図へとなって行きます。実際に現地の中国人からするとこの対立構図が主流なようで、それがために前回の記事にて紹介したウイグル自治区から遠く離れた広東省においても大きな暴動が起こることとなったのです。

 しかし、仮にこれが話が終わるというのであれば恐らく中国政府としてはホクホクものでしょう。というのも中国政府がこのウイグル問題でもっとも恐れているのは、この対立構造の枠がどんどんと膨れ上がることだからです。
 この点なんかは中国の官僚もはっきりと口にしていますが、現在の中国は上海を筆頭とした湾岸部が大きく発展して生活水準も向上している一方、ウイグル自治区を含む中国内陸部は以前と発展が進まず、まるで戦前とバブル期の日本が同時に存在しているような状況にあります。それがために内陸部の人間は発展による旨みを独占している湾岸部、ひいてはそれを主導している政府に対して少なからず不満があり、それがウイグル自治区での独立運動や暴動と結びついた場合、現在の「中国政府VSウイグル族」という枠から「中国政府VS中国内陸部」という大きな対立構図に発展して中国は大混乱になると大半の中国識者は見ております。

 実際に近年、表にはあまり出ないまでも中国の内陸部では村単位での暴動がよく起こっていると各所で言われております。そうした内陸部の騒動は中国政府ががっちり抑えているのであまり表には見えてこないものの、ウイグル自治区に海外の人権派などの目も厳しいために今回の暴動や独立運動などもメディアに露出するため、それに触発されて同じ漢民族でも内陸部の中国人が暴動を起こすのを中国政府は恐れているわけです。
 さらに私はウイグル人の信仰する宗教がイスラム教であるため、もちろんイスラム教内にもたくさんの宗派があるわけですが、なんらかのきっかけによってアフガニスタンなどのイスラム系国際テロリストと結びついてしまえば今度は「中国政府VSイスラム教」という具合に対立が大きくなってしまう可能性もあると見ています。

 このように視野を広げてみると、いろいろと見えてくる事情もある上に問題への理解もぐっと進むようになります。別に今に始まったわけじゃなく戦時中も日本人はこうした戦略的視点が非常に弱かったのですが、この点は同じ島国でもイギリス人と比べると致命的ともいえるほどの弱さです。よくうちの広島に左遷された親父なんかは日本人はもっと世界を知るべきだと主張しているのですが、私はこうした戦略的な視点を持つことが親父の言う世界を知るということになると考えております。

 最後に補足しておくと、現在の自民と民主の政権争いはいわば手段の争いであって目的の争いではないと私は見ています。ではどの党が戦略的視点を持っているかですが、私は現時点ではほとんどの政治家はそのような視点を持っておらず、また日本人の中でもその議論が理解できる人間は少ないのではないかと思っております。今日はなんだか元気がないので書きませんが、また明日にでもその辺をご紹介します。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 なるほど、ウイグル問題でなにが重要なのか理解できました。ありがとうございました。

 確かに「中国政府VSイスラム教」となるとまさに世界大戦になってしまうかもしれませんよね。中国はいたずらに領土を増やしすぎましたね。

 

花園祐 さんのコメント...

 まさに太平洋戦争初期の日本と同じように、領土が広がりすぎて守りきれない状況ですね。今回書いた話は前にも一回紹介した「中国官僚座談会」の中で詳しく書かれているのですが、その本は2008年前半の発行でしたが、まさに書かれていた通りにウイグルが火薬庫になったのには勉強していて良かったと思いました。