2009年1月14日水曜日

失われた十年~その十九、心理学ブーム~

 前回の終末思想についての記事で私がこの連載の後半でもって行きたい話の筋道をあらかた書きましたが、今回はこの失われた十年の間で流行った妙なものの中から一つ、心理学のブームについて解説します。

 まずこの心理学が一躍社会に注目されるようになったきっかけは前回にも書いたように、映画「羊たちの沈黙」による影響が大きいです。この映画は原作となったストーリーの面白味に加えハンニバル・レクター役を演じたアンソニー・ホプキンスの名演技が光り大ヒットしましたが、映画を見たことがわかる人なら言わずもがなですがこの映画の主役とも言うべきハンニバルの職業は犯罪心理学博士で、映画中にも使われている犯行時の状況から犯人像を絞るという捜査手法の「プロファイリング」が映画同様に大ブレイクしました。

 特にこの心理学ブームが最も顕著に現れたのは大学における心理学部、学科の偏差値の向上においてです。今日調べてみたらどうも以前ほどではなくなってはいますが、それこそ95年くらいの大学入試において心理学関係の入試は他の文系学部より頭一つ抜ける高さで、有名私立大学の心理学部などはそれこそ狭き門となっていきました。この傾向はしばらく続き、私が大学入試をした年も依然として高いままで周りにも心理学を勉強したいというブームに流された友人が数多くいました。
 ちなみに私の知っているある大学は、付属高校の学生を心理学科にどんどんと入れることによって外部生の倍率が高まるために偏差値が高いだけで、教師も認めていましたがそこの学科の学生はあまり勉強のできる奴はいないと言っていました。

 こうした大学の倍率とともに、すでに完璧に死語と化していますが前述の「プロファイリング」も大いに当時は流行りました。そのためか一時はブームに乗っかってテレビではこのプロファイリング特集がよく組まれたり、ジャンプでもこれを主題にしたマンガを連載させてはこけて、97年に起こる酒鬼薔薇事件ではワイドショーなどが自称プロファイリング捜査官を出演させては何の根拠もない実際の犯人とは大きく異なる予想が立てられたりしていました。
 さらにこれも前回の記事でも言いましたが、恐らくこういった背景があったことからミステリーやオカルト分野への社会の関心が高まり、「金田一少年の事件簿」といった推理マンガこの時代に数多くヒットしたのではないかと見ています。「名探偵コナン」はずっとヒットし続けているけど、我が心のふるさと鳥取県出身の漫画家と来たら私の中では未だ水木しげるしかいません。

 それでこの心理学のブームですが、きっかけこそ先ほどの「羊たちの沈黙」でしょうが、ブームが持続したのはこの心理学が利用しやすかったことが原因だと私は考えています。というのも、これなんか私の専門の社会学でもそういう一面もあるのですが、どんな滅茶苦茶な理論でも精神的障害(トラウマ)と統計操作を行うことで、パオロ・マッツァリーノ氏の言う通りに心理学と社会学は思いのままに立証できてしまうからです。

 先に言っておきますが、真剣に研究している心理学者の方々たちには非常に申し訳ありませんが、私はこの心理学を全学問分野の中で蛇蝎の如く一番嫌っています。もちろん真面目に研究している方たちには非常に尊敬もしていて臨床心理学など研究的価値のある分野だと考えていますが、それを推しても現状では以前ほどではないにしろ心理学を錦の御旗に明らかに実証性のないとんでもない理論を振りかざしては流行らす輩が多いため、私はこの心理学に対して常日頃から批判的な立場にあります。

 それこそ心理学がブームだった90年代後半はなんにでも理由付けや根拠に心理学が利用されて、「心理学的には~」とか「トラウマによる影響で」といってはエセ科学や偽情報が片っ端から作られていきました。よくあったのは「こうすることによって心理学的には相手に対してこのような感情を持たせる」というフレーズで、今も数多い恋愛交渉術のやり方が紹介するなどの万能振りを見せ、更にはよくある質問本で、「Aと回答する人はこんな性格」といったようなものまで出てきて、もはや心理学と言えば誰でもなんでも信じ込んだ時代でありました。

 こういう具合にメディアから商業主義にまでなんにでも利用され続けたため、この心理学は失われた十年の間に一貫としてブームを保ち続けたのでしょう。しかし冷静に今見渡してみると、大分この時と比べて心理学の威力というものは弱まった気がします。ちなみに私が一番好きな心理学の話は、前に私も書いた「パブロフの犬の逆説」です。

2 件のコメント:

  1.  確かに、心理学って言うだけで人気が出ていますよね。うちの大学でも、授業で恋愛のことにまで触れるとかで女子学生に人気の授業があります。恋愛なんて、心理とかあてにならんだろうに。

     それと、友人から聞いたのですが色彩学なんてのも存在するみたいです。それは、お菓子の袋を柿色にすると安くて手ごろな感じを与えるとか、黒にすると高級感が出るとか。まあ、なんとなくわかるのですが、結局物を選ぶときは自分の価値判断で決めるんで、そんなに大勢に影響はないかなって思いますね。  
      僕はいつも値段とにらめっこですよ笑

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  2.  広告業界の人間なんて、それこそ一色一色に目を光らせていますけど、そんな努力をするならいいキャッチコピーを考える方がずっといいと思いますね。

     やっぱりこういう流行りやすい学問というのは、効果が実証しづらいものが断然多いです。実証できないために言ったもん勝ちなところがあり、そうやって人は騙されていくのでしょうね。環境問題も過分にそういう面があります。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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