2009年1月5日月曜日

「右翼」、「左翼」という言葉の問題性

 前々から書こうと思っていましたが、ちょっと以前のコメント欄にいい具合の質問が来たのでこれを機に「右翼」と「左翼」という言葉の問題性について書いてみようと思います。結論から言うと、私はこの二つの言葉は今後五年間は一切使うべきではないと考えています。

 この二つの言葉は元を辿ればフランス革命後の議会にて、議長席から見て右側に保守層の、左側に革新派層の議員が座ったことより生まれた言葉で、そういう意味でオリジナリィーな意味では右翼とは保守層こと従来の制度をどちらかといえば守ろうとするものに対して左翼は革新派層こと制度改革を推進するグループという意味になります。
 こうした元々の意味からいえば一見すると現在の日本政治で右翼や左翼といわれている政党はそのように見えなくもないのですが、実体を考えると憲法を守ろうとするのが社民党や共産党といった左翼政党であるのに対して、憲法を改正しようとしているは自民党や民主党といった右翼政党であり、また経済政策については自民党内でも格差を是認する「新自由主義」と公共事業にて地方への公平分配を目指す「日本型ケインズ主義」といった政策を掲げる議員で分かれており、一概に右翼=保守、左翼=革新とはもはや言い切れない状況です。

 では何故このようにいろいろややこしくなってしまったのかというと、単純にいってしまえば日本の国民を含めたメディアや知識人層が何でもかんでも政治家や政党を右翼と左翼という二つの言葉に無理やり押し込んで理解しようとしたせいで、元々の保守と革新という意味だけでなくいろんな属性や意味が右翼と左翼という言葉に含まれるようになってしまったからです。

 一例を挙げてみましょう。これは私の私見ですが右翼という言葉には一般には以下のような意味が内包されている気がします。

・軍国主義、戦前礼賛、天皇制保持、格差是認、新自由主義、地方分配主義、新自由主義、改憲派、親米派、親中派、自衛隊容認

 読んでもらえばわかると思いますが、明らかに矛盾する要素同士が混ざり合っています。たとえばさっきにも挙げた新自由主義と地方分配主義は明らかにぶつかる意見ですし、外交でも親米と親中じゃ全然逆です。しかし現在右翼政党といわれている自民党と民主党の中にはこうした意見を持つもの同士が一緒に内包されており、一例を上げれば小泉元首相と加藤紘一衆議院議員などは先ほどに矛盾するといった要素を互いに分け合って持っています。ですが、世間一般からは彼らはどちらも右翼議員となるのです。

 これに対して左翼を構成する要素というのはどんなものかというと、

・平和主義、戦前批判、天皇制反対、平等主義、人権擁護、社会主義経済、護憲派、反米派、親中派、自衛隊否定、自衛隊容認

 といった具合で、やっぱり議員数の差もあるのか構成する要素が右翼よりは少ないですね。それにしても今書いてて気がついたけど、憲法保持を訴えている割には憲法で身分が規定されている天皇制に反対ってのはどんなもんだろう。
 この左翼についても、右翼と比べて外交姿勢は反米親中で共通こそしていますが先ほどの憲法の話といい、人権擁護と社会主義は明らかに矛盾するし、自衛隊についても口では批判してたくせに村山内閣ではあっさり認めてしまうという迷走振りを見せており、いくらか矛盾した要素が右翼ほど目立ってはないものの見えてしまいます。特に平等主義については私が一回ふざけた調査をしたら、しんぶん赤旗をとっている人の資産数が他の新聞購読者と比べて図抜けて多かったのを初めとして、共産党内のピラミッド的な非民主主義的組織構造を持ちながらの建前との差には呆れます。

 一気にまくし立てて書きましたが、このように主義主張から目標としている政策内容まで政治家はそれこそ千差万別であるにもかかわらず、メディアや国民はやっぱり右翼か左翼かの二者択一で判断したがるところがあり、その結果今挙げたようにこの二つの言葉に無数の要素が取り付けられ、かえって政治家の本質を見誤る傾向がこのところの日本にはあります。また例に挙げちゃいますが先ほどの小泉元首相の政治家としての要素を簡単に並べると、

・格差是認、新自由主義、天皇制反対、自衛隊容認、親米反中

 というようになり、靖国神社に参拝していたから戦前礼賛かと思いきや私はこの人は実際にはそれほど戦前の軍国主義には思い入れがなく、ただ単に安上がりで支持者を獲得できるだけで参拝していただけに思え、またこちらはあまり表に出ませんが天皇制については90年代から女系天皇容認論を主張するように非常に冷淡な人物であります。ですが先ほどの右翼というフィルターがかかってしまうと、この天皇制への彼の態度というものが見えづらくなってしまいます。

 再度の結論ですが、やっぱり政治家を二項対立的に右翼か左翼かで見るのは本質を大きく見誤らせかねず、可能ならば個々の要素ごとに政治家を見つめなければいけません。そういう意味でここしばらくは右翼と左翼という言葉を使わず、敢えてわかりやすく二項対立にしたいのなら現在のところ最も大きな争点となっている「新自由主義」と「地方分配主義」の対立要素で見比べる方が全然マシかもしれません。

3 件のコメント:

  1.  なるほど。右翼、左翼と単純には分けられないのが現在の日本の政治なんですね。政治といえば、右翼か左翼かに分かれるというのはもはや、通用しないのですね。
     

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  2.  別に政治に限るわけではありませんが、世間の見る物事というのはわかりやすく理解したいがために二項対立に陥りがちです。それこそ、景気が好況か不況なのかとかで、不況ならどんな不況なのかと言う風な議論にはなかなか行きません。
     難しいとはいえ、多角的に物事を見ることがいい分析屋になる第一条件ですね。

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  3. Yahoo!ニュースのコメント欄がひどく、ネットに関しての右翼左翼に関する記事を調べて見ていたらこの記事にたどりつきました。

    正に、求めていたものでした。

    右左ではもう日本は前に進めないとおもいます。

    右、左のフィルターはそれぞれが持っている能力や力をあわせるという人間的な行動、また論理的な話し合いの妨げになっているんじゃないかな~とつくづく思いました。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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