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2008年12月18日木曜日

次の選挙後に想定される政局

 選挙選挙と言われながらも、とうとう今年も年を明けそうです。福田前首相は起死回生の策として自分が辞任することによって新たに自民党代表選を行い、その熱が冷めないうちに選挙に持ち込み選挙を制すという手段を取ったのですが、そうして登場した現麻生内閣は当初でこそすぐに解散総選挙に持ち込むと言いながらもずるずると状況を引っ張って支持率も激減し、かえって福田内閣末期異常に事態が悪化しております。

 ここで一つの疑問ですが、何故麻生首相は選挙を先延ばしにしたのでしょうか。この件については様々な評論家がそれぞれの意見を述べ合っていますが、まず共通した意見として発足した当初は確かにすぐ解散を行う意思があったようで、わざわざ文芸春秋上でも「即、選挙だ」と麻生首相も自ら述べていたので私もこれを支持します。
 では何故、それが心変わりしたのでしょうか。一部の人などは「まさに君子豹変す」と評しましたがこれについてはいくつか意見があり、まず麻生首相が自分で言っているようにリーマンショックを受けて急激な不景気が到来したためという意見や、自民党選挙対策本部の調査で当時に選挙に出てもあまり勝算が見えなかったからだとかいろいろあります。

 こうした意見の中で私が最も支持するのは、確かこれは赤坂太郎氏の意見ですが、選挙前に何かしら一つ成果の見える政策を実行して支持を集めた上で解散に打って出ようとしたところ、政策を打ち出す傍から空振りが続き、また打ち出した政策に民主党が反対姿勢を見せたところで「民主党は政策より政局を優先する」
という論拠も得ようとしていたたところ、思っていた以上に民主党が政策議論に協力的だったためにこちらも空振り、そうこうしている内に中山元国交相の失言から麻生首相自身の失言が重なり選挙に打って出ようにももはや立ち直れないくらいの事態に陥ってしまったというのが真実でしょう。

 そういう意味で、今年後半の民主党の対応は見事だったと言わざるを得ません。前述した通りに麻生政権発足当初は非常に議会での議論に協力的で、その甲斐あって異様な速さで経済対策としてまだ有効であった一次補正予算案も通過しました。更にその後も「解散を約束していたからこそ議論に協力したのに、解散がないのではもはや協力できない」として給付金問題で混乱しはじめた時期から今度は一部で審議拒否を行うようになりましたが、これについても世論からあまり批判が起こらず、むしろわけのわからない政策を出しては引っ込め、給付金の配布に必要な二次補正案もなかなか出さすにいた麻生首相の迷走振りから逆に自民党へと批判が増えていきました。これまで民主党が審議拒否をすると民主党が叩かれていたのを考えるとこれはかなり異例な事態で、裏返すとそれだけ麻生内閣の管理が悪かったという意味ですが。

 更に先月、当日になって急遽小沢民主党代表の要請によって行われた党首会談もまた絶妙(中国では絶妙のことをたまにクイズ形式で「黄絹少女」と言う)でした。この党首会談にて小沢代表は二次補正予算案を本当に出すのか出さないのかを問いただし、それに対して麻生首相は話をはぐらかして明言を避け、結果的に麻生内閣が政権の存続理由としていた不景気に対して緊急対策を行うという(恐らく、適当に言っていただけだろうが)土台を根本から揺るがし、これ以降自民党内でも急激に麻生内閣を批判する声が増えていきました。

 私はこれまで同世代の中では誰よりも口汚く民主党を罵って来た人間だと自負していますが、さすがにこれほどまでの迷走振りを見せられると民主党に肩入れせざるを得ません。またこれまで民主党は批判だけで独自の政策を持っていないと言われてきていましたが、官僚キラーの長妻昭氏を筆頭に実行力はまだ未知数ですがそこそこ見栄えもよく理屈も通った政策案を去年から今年にかけて多く提唱するようになり、三宅久之氏が指摘したように現在ではかつてとは逆に自民党が民主党の政策のいいとこを自分の政策にしてしまうというクリンチ作戦を取るようになってきており、民主党には独自の政策がないという批判はもう当てはまらないと考えています。

 という具合の現段階の政局ですが、この状態が今後続くかどうかはわからないまでにしろ次に解散選挙が行われるとどうなるか、予想される事態を議席をベンチマークにしていくつか予想を書いて見ます。


  想定1、自民党が大勝し、三分の二議席を維持する
 まぁ現段階ではありえない想定ですが、もしこうなった場合は現麻生政権がそのまま続くことになり、相変わらず参議院では野党の議席が上回ったままでねじれ国会は続きますが少なくとも世論の支持を得ることによって自民党がイニシアチブを握り、現状よりはずっとマシに国会運営が行えるようになるでしょう。

  想定2、自民党が大敗し、民主党が単独過半数議席を得る
 こうなってしまえば完全に政権交代で、文字通り民主党の天下になります。ただこの場合、参議院で民主党は単独過半数を得ていないので他の野党と連立を組む可能性があります。その場合、前回選挙時にもいろいろ取り沙汰されていましたが国民新党や社民党が少ない議席ながらも大きな影響力を持つことが予想され、自民党内でも造反者が出て民主党に合流するということも大いに考えられます。なお共産党は現段階ではっきりと連立は組まないと主張しているので、この連立に入ってくる可能性は非常に低いでしょう。

  想定3、自民党が単独過半数議席を確保するも、三分の二議席を失う
 はっきり言いますがこれが最悪のケースです。現在の自民党が十議席を失うことでこの三分の二を割ることになるので最悪ながらもなかなか可能性の高いケースなのですが、こうなると自民党が法律案を出しても参議院で民主党が反対することによって簡単に否決されるのはこれまで通りですが、否決された場合にこれまでは衆議院での三分の二の大多数可決によってどんどんと通していったのですが、このケースになるとこの三分の二可決が使えなくなるのでねじれ国会の弊害がますます進み、ただでさえ滞りがちな国会がさらに滞るので日本にとって悪影響が強まる可能性が非常に高いでしょう。

  想定4、自民、民主共に単独過半数に届かない

 こちらもなかなか可能性の高いケースですが、これだと自民党、民主党のどちらが内閣を作ったところでまともな国会運営も出来ず、一見すると「想定3」以上に深刻な事態に陥るように見えますが、恐らくこうなった場合は民主党を中心にして非自民連立政権が作られるか、自民党内で造反者や新党が結成されて政界再編が一挙に起こる、というより再編が起こるのにおあつらえ向きな状況だといえます。恐らく現在の衆議院議員の多くはこの状況を想定しており、その際にどうするか、誰やどこにつけば上手く乗り切れるかを必死で分析している最中でしょう。
 私としても閉塞した今の状況を打開し、官僚の問題などを解決するにはこの政界再編が必要だと感じており、多少リスクはあれどもこのような事態になるのを最も望んでいます。

 
 と、いくつか今後起こりうる事態を四つにまとめて挙げましたが、やはり現時点で私は自民党が今のような状態で勝つことは考えづらく、政界再編を含めて次の選挙で大きく山が動くと考えています。だが敢えて自民党が次の選挙で勝つにはどうすればいいかと問われるならば、いろいろ取り沙汰され始めてきた現民主党国対委員長の山岡賢次氏とマルチ商法会社との癒着問題を今はじっと黙って見過ごし、選挙直前に証拠やら糾弾を強く行って取り上げる方法を選びます。前の記事で私も書きましたが、この問題は現在の民主党にとって最大のアキレス腱です。逆を言えば今の段階でこの山岡氏を前に切られた前田氏の様に切れば、民主党は完全に死角をなくし、次の選挙での勝利を確信してもよいと思っています。まぁ、出来ないと思いますが。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

僕も民主党の政権担当能力にはかなり疑問に思っていますが、次の選挙では自民党の過半数割れが一番いいような気がしています。この項目でいくと、2か4ですね。

民主党に政権担当能力が無いと言う予想が正しければ、そのことにみんな気づく良い機会だと思います。もし、民主党に政権担当能力があれば、それはそれで最高の形ですね。いずれにせよ、試してみないと分からないんですよね。そう言う意味で、自民党の敗北が失敗でも、失敗から学べる良い形だと思います。

匿名 さんのコメント...

調子が戻ったようで何より。

花園祐 さんのコメント...

 なぜか知らないけど前回はえらく神経が高ぶって、全然文章が組み立てられませんでした。逆にこの記事は断片的な政情をコンパクトにまとめて見やすく今後の予想を立てられ、自分でも秀逸な部類に入る記事だと思っています。

 民主党に政権担当能力があるかないかですが、少なくとも現時点の自民党は二代続けて政権が一年も持たず、また明確な政策目標もないばかりか既に決まっている公共事業の削減シーリングを放り投げるなど政権担当能力がないというのは事実で、それならば民主党に一旦は任せるべきだというのは国民全体で共通した認識になりつつありますね。