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2008年12月3日水曜日

犯罪者の家族への社会的制裁について

 かなり昔に法学部に通っている友人からこんな話を聞きました。

「日本の刑事事件で判決を下す場合、基本的には犯罪に対する制裁という意味では敢えて一段低く刑事罰を決めている。というのも、その犯罪を行った被告にはその後将来にわたって前科が付きまとい、自然に就職や生活面で社会的制裁というハンデがつくことが織り込み済みだからだ。要するに、刑事罰と社会的制裁がセットで犯罪への制裁が考慮される」

 この話を聞いて、私は非常になるほどと思いました。確かにどんないきさつがあれ犯罪を起こした者にはその後どれだけ改心したとしても、元犯罪者というレッテルが付きまといどこへいっても社会的制裁が付きまといます。それを考えたら刑務所にいる年数などは、こうした社会的制裁をあらかじめ考慮して決めるべきだと言われてみるとその通りです。
 しかしこの社会的制裁ですが、犯罪を行った本人にのみ効力を及ぼすのならともかく私も何度かこのブログで記事を書きましたが、実際には何の罪もない、その犯罪者の近親者に対して容赦のないマスコミの報道によってその効果を強く及ぼすことの方が多いです。

 いくつか私の覚えている例を挙げると、一番代表的なのはやはり酒鬼薔薇事件の犯人の家族です。この家族の例だと持ち家を売り払って居住地から引っ越さざるを得なくなり、犯人の弟もそれに合わせて学校も転校せざるを得なかったそうです。さらに歴史をさかのぼると、今年死刑が執行された宮崎勤の事件ではあまりの報道の過熱ぶりや社会的批判を受けてか、犯人の宮崎勤の父親が自殺に追い込まれています。
 そして私が一番悔やんでならず、もっと議論を深めるべき事件例だと考えているのが姉歯秀次元建築士による強度偽装事件にて、姉歯受刑者の妻の投身自殺です。事件報道を見ているこちら側としても、自宅の玄関を四六時中カメラで映してはごみの出し方から門構えなど、なんにでもいちゃもんをつけるマスコミの報道振りには寒気を覚えました。恐らくもし自分があのように報道される立場に回った場合、自殺しないにしても相当神経が参り、その後に立ち直ってまたまともに生活できる自信がありません。

 このようにセンセーショナルな犯罪事件の場合だとマスコミの報道が過熱し、しばしばその報道は犯罪者の近親者に対しても強い社会的制裁を与えることとなります。しかし一部ではこうした報道に対し、犯罪者の身近にいた、それも犯罪者の親なら駄目な子を社会に出してしまったのだから同様に制裁を受けてもしょうがないという意見をたまに見かけますが、今時連座制ではないのだし、それはとんでもなく間違った考え方でしょう。これまでの私の経験からすると、たとえどんなに出来た人の子供でも中には変な人間も育ってしまうこともあります。そうやって出てくる変な人間に対して親の教育がどうとかこうとか議論したところで、また社会的制裁が近親者にまで及ぼすという概念が犯罪者に作用して犯罪が減少したりという風にはとても思えません。

 結論を言ってしまえば、犯罪者の家族への社会的制裁は本来あってはならないものだと私は考えています。それはいうなれば、どんな事件であろうとこうした近親者の報道をマスコミはしてはならないということです。このような議論は何も今始まったものではなく昔からありますが、一向に改善される気配はありません。
 恐らくマスコミの側からすると、視聴者が求めるから取材をしているだけだ。悪いのはそういったゴシップを求める視聴者だというようなスタンスを毎回取っていますが、この言わんとしていることは確かにわかりますし、大衆はゴシップを求めているのも事実です。ですが本来中立を主張するべきマスコミならば、そうした求める声があるとしても社会的影響を鑑みて、敢えてそのような部分に触れないと判断するべきではないでしょうか。

 よくこうした部分への報道や取材の制限を厳しく法制化するべきではという議論が起こる度、マスコミは国民の知る権利が損なわれると言っては強く反対します。ですがマスコミ自体がその何の罪のない近親者に対して社会的制裁を現実に与えて続けているというのなら、私はもはや法制化もやむを得ないと考えています。というのもマスコミは、長年この問題が議論されているにもかかわらず一向にこうした近親者への報道被害を自主規制する動きを見せないからです。それならば国の法律によって取り締まる以外、こうした人たちを救う術はないでしょう。

 ややまとまりのない文章になりましたが、今も起こっている厚生省元次官の連続殺傷事件の犯人の実家への執拗な報道など、この問題は現在進行形の問題です。私はあまりこういうゴシップには興味がないのも影響しているでしょうが、早いうちにこうしたことはもうやめにしなければいけないと思います。
 ちょっとこれについてもう少し思うことがあるので、明日また続きを書きます。

2 件のコメント:

Office TK さんのコメント...

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%B0%E3%82%82%E5%AE%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84

花園祐 さんのコメント...

 「誰も守ってくれない」という映画のウィキペディアのアドレスのようですね。恥ずかしい話ですがこの映画は今まで知らず、興味もあるので機会があれば見てみようかと思います。
 あとアドレスだけだとちょっとわかりづらいので、出来れば一言か何か入れていただければ助かります(´∀`)